ニュース解説

医療機器の物流拠点が横浜に誕生、手術を支える倉庫の新しい役割

澁澤倉庫がストライカー日本法人の横浜物流センターを開設。大型医療機器やロボット製品の保管から出荷、アフターサービスまでを担う拠点の意味と、物流業界・医療現場への影響を読み解きます。

公開日: / 読了目安: 約4分

医療機器の物流拠点が横浜に誕生、手術を支える倉庫の新しい役割

医療機器の物流拠点が横浜に誕生、手術を支える倉庫の新しい役割のニュース解説イメージ

ニュースの概要

澁澤倉庫は、米国の医療機器大手ストライカーの日本法人が運営する「横浜物流センター」を、横浜市内の恵比須町営業所の中に開設すると発表した。ストライカーにとって国内6拠点目にあたる。扱うのは大型の医療機器やロボット支援手術の関連製品で、保管だけでなく、流通加工、出荷、修理や点検といったアフターサービスまで一つの施設で受け持つ。首都圏を中心に広い範囲へ届けるハブ(=中継の要)として動かし、品質管理と追跡の仕組みを生かして、手術のような急ぎの現場へ安定して供給することを目指す。

引用元: 澁澤倉庫、横浜に医療機器物流センターを開設(PR TIMES / 澁澤倉庫株式会社)

分析・見解

倉庫が受け持つ範囲が保管から整備まで広がった

今回の拠点で目を引くのは、置き場の提供にとどまらない点である。大型機器の保管、流通加工、出荷に加え、アフターサービスまで同じ屋根の下に入る。流通加工とは、梱包の組み替えや付属品のセット作りなど、出荷前の仕上げ作業を指す。

これまで医療機器メーカーは、保管を倉庫会社に、点検や修理を自社の別拠点に任せることが多かった。機器が何度も移動すれば、そのたびに破損や記録漏れの危険が増える。一か所にまとめれば、移動の回数が減り、機器の履歴も途切れにくい。

手術室に届かない一日は代替がきかない

医療機器の物流が一般の貨物と違うのは、遅れの損害が金額で測れない点である。手術は日程が決まっており、器械が届かなければ患者の予定ごと動かせなくなる。ロボット支援手術の装置は一台が非常に大きく、精密で、振動や温度の影響も受ける。

この分野の考え方は、半導体製造装置や美術品の輸送に近い。専用の梱包、専用車両、受け渡し時の立会いなど、荷物の価値に見合った手間をかける。当サイトで扱う精密機器輸送やクリーンルーム輸送の現場と、求められる水準がよく似ている。

横浜が選ばれた理由は広域配送の効率にある

横浜は首都圏の病院が集まる地域に近く、港や高速道路にも出やすい。ここを拠点にすれば、東京、神奈川、埼玉、千葉の主要病院へ半日圏内で届けやすくなる。物流で言う「ラストワンマイル」の手前を厚くする狙いである。

一方、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられた、いわゆる2024年問題の影響で、長距離の直送は難しくなった。拠点を需要地の近くに置き、幹線輸送をまとめて行い、最後を短い距離で配る形へ移る動きは、他の業種でも進んでいる。医療機器でもその流れが本格化したと見るのが自然である。

追跡の仕組みが信頼を支える土台になる

今回の発表では、トレーサビリティ(=いつ、どこで、誰が扱ったかを後から追える仕組み)の活用が強調されている。医療機器は不具合が見つかった際に、どの製品がどこにあるかを速やかに特定する必要がある。

製造番号ごとの管理は手間がかかるが、回収や点検の範囲を絞り込めれば、結果として費用も患者への影響も小さくなる。今後は温度や衝撃の記録を荷物ごとに残し、受け取る病院側にも共有する形へ広がるだろう。倉庫は荷物を預かる場所から、品質の証拠を作る場所へ変わりつつある。

ビジネスへの影響

物流会社は専門性を高めるほど選ばれやすくなる

倉庫業は価格競争になりやすいが、医療機器のように規制と品質要求が高い分野では、実績そのものが参入の壁になる。澁澤倉庫のように、特定の荷主の仕様に合わせて拠点を作れる会社は、長期契約を得やすい。

自社の強みを「何でも運べる」ではなく「この種類の荷物なら任せられる」と言える形に絞ることが、価格以外で選ばれる近道になる。

荷主企業は拠点の数より中身を見直すとよい

メーカーや商社の担当者が参考にできるのは、拠点の統合と機能の集約という考え方である。保管、加工、出荷、修理を別々の場所に置いていると、移動と記録の手間が積み重なる。

まず自社の荷物がどこを何回通っているかを書き出してほしい。次に、移動のたびに起きている破損や遅れ、記録の抜けを数える。数字が出れば、3PL(=物流業務を専門会社へ一括で任せる方式)への切り替えが妥当かどうかを、感覚ではなく根拠で判断できる。

医療以外の業種にも同じ発想が広がる

産業用ロボット、検査装置、再生可能エネルギー設備など、大型で高価な機器を扱う業種は、同じ課題を抱えている。納品後の点検や部品交換まで物流拠点で受けられれば、顧客対応の速度が上がる。

契約を見直す際は、運賃の安さだけで比べず、記録の出し方、事故時の対応手順、緊急時の連絡経路を確認項目に加えることをお勧めする。

関連記事

[PR] AI搭載ボイスレコーダー Plaud