ニュースの概要
大型重量物の吊り上げと輸送を手がけるMammoetが、ウズベキスタンで建設が進む出力1.5GW級のコンバインドサイクル発電所向けに、重さ500トンを超える電力設備を運び込んだ。同国は海に面していない内陸国で、道路には重量や寸法の制限がある。そこで同社は、次世代の大型発電設備を運ぶために設計された専用機材AL600を投入し、遠隔地の建設現場まで搬入を進めた。ガスタービンや変圧器のような設備は、一般的なトレーラーや通常の輸送手順では扱えない。今回の件は、発電所の建設が機器そのものだけでなく、運ぶ手段の確保にも左右されることを示している。
引用元: Mammoet、ウズベキスタンの15億ワット発電所向け大型電力設備を輸送(Gulf News Dubai)
分析・見解
500トン超の貨物は運べる道から逆算する
500トンを超える貨物は、一般的な大型トラックの積み荷の十倍以上の重さになる。こうなると道路は、ただ走る場所ではなく、荷物に耐えられるかを確かめる対象になる。橋の強度、道幅、カーブの半径、頭上の電線の高さまで、すべてが計算の条件だ。
だから輸送計画は、機器の完成後ではなく発注の段階から動き出す。運べない設計では、どれほど高性能でも現場で使えないからだ。日本でも、大型変圧器を内陸の変電所へ運ぶ際は、夜間の通行規制や橋の事前確認を組み合わせて日程を組む。規模は違っても、考え方は同じである。
港から遠い内陸国で、難度はさらに上がる
ウズベキスタンは、海に出るまでに別の国をもう一つ越える必要がある「二重内陸国」として知られる。大型機器は港で船から降ろされたあと、鉄道や道路を乗り継いで長い距離を移動するのが一般的だ。国や地域が変われば、通行の許可も規則も変わる。一か所でも制限に引っかかれば、全体の日程が止まる。
難しさは距離だけではない。積み替えが一回増えるたびに、吊り上げ作業と待ち時間も増える。距離が長いほど、予備日程の置き方も重要になる。専用機材で積み替えを減らせるかどうかが、工期と費用に直結する。
専用機材AL600は発電設備の大型化の表れ
AL600が次世代の大型発電設備向けに設計された点は見逃せない。ガスタービン発電は効率を高めるため、一基あたりの出力が大きくなる傾向にある。出力が上がれば、タービンや発電機、変圧器も重く大きくなる。発電設備の進化が、輸送機材の進化を引っ張っているわけだ。
輸送会社にとって、機材開発は賭けでもある。使える案件が限られる専用機材は、大型発電所の建設が続くという見立てがなければ造れない。AL600の登場そのものが、その需要が続くという判断を映していると読める。
工期を崩すのは製造より搬入の遅れ
発電所の工期は、機器の製造よりも搬入で崩れることが多い。製造は工場で管理できるが、輸送は天候や許可、道路の状態といった外部の要因に左右されるからだ。今回のように輸送会社が前面に出る案件は、輸送が事業の重要な工程として扱われている証拠と言える。
ここで注目したいのは、貨物の重さそのものより、いつ、どの順で届けるかの設計である。数百トンの機器は一つだけでなく、複数が決まった順序で現場に入る。据え付けの順番と搬入の順番がずれると、現場には巨大な機器が置き場もなく待つことになる。輸送は、建設工程表の一部として組み込まれて初めて価値を持つ。
ビジネスへの影響
大型機器の調達は輸送の見積もりと同時に進める
プラントや工場設備を海外から導入する企業は、機器の価格だけで業者を選ぶと危うい。重量物は、輸送費が総費用の中で大きな割合を占めることがあり、条件によっては機器の価格差を上回る場合もある。発注前に、輸送ルート、通行許可の取得にかかる期間、現場の受け入れ設備を確認したい。輸送費の見積もりを機器の発注と同じ時期に取れば、設計変更の余地も残る。
契約書では、搬入が遅れたときの責任の分け方を明記しておく。天候や許可の遅れで日程がずれた場合の扱いも、先に決めておくと揉めにくい。
荷物が小さくても使える三つの視点
数百トンの機器を扱わない企業にも、応用できる視点はある。第一に、経路の事前調査を省かないこと。精密機器や美術品でも、搬入口の幅やエレベーターの耐荷重で止まる例は多い。たとえば半導体製造装置は、重さよりも振動や傾きへの弱さが制約になる。制約の種類は違っても、経路を先に確かめる姿勢は変わらない。
第二に、積み替えの回数を減らすこと。回数が増えるほど、破損と遅延の機会も増える。第三に、輸送会社を設計の早い段階から巻き込むこと。
日本の物流会社は専用機材を持つか提携かを見極める
国内の物流会社にとっては、自社で専用機材を持つか、専門会社と組むかの判断材料になる。需要が読めない専用機材を抱えるのは重い。案件ごとに専門会社と提携し、調査や許可手続きの部分で価値を出す道もある。海外案件では、現地の規則に詳しい相手を早めに見つけることが、受注後の混乱を減らす。
なお、今回の記事だけでは契約の形や費用までは分からない。数字を断定せず、自社の案件で見積もりを取って確かめるのが確実だ。
