日本通運が2026年に投入した「NXデバイスコンポEco」は、従来のフィルム梱包を排し段ボールを主体とする精密機器輸送の新サービスだ。電子部品や医療機器など振動・衝撃に敏感な小型精密機器の輸送において、プラスチック廃材の発生を大幅に抑えながら必要な保護性能を維持する設計思想が特徴となっている。精密輸送分野における環境対応と品質両立の試金石として注目される。
参考: 日本通運、フィルムレス梱包の小型精密機器輸送サービスを開始(LNEWS)
分析・見解
素材変更ではなく「保護設計」全体の作り直し
今回の新サービスの本質は、梱包材をプラスチックから段ボールに変えただけではない点にある。従来、精密機器の輸送ではストレッチフィルムや気泡緩衝材(プチプチ)などのプラスチック資材を何層にも重ね、振動を吸収し固定する役割を担わせてきた。今回、日本通運は段ボール自体の構造強度と緩衝性能を計算し直し、内部の仕切りや折り込み方の工夫で衝撃のエネルギーを分散させる方式に切り替えたとみられる。
巻き付け作業が減り、梱包工程を標準化・自動化しやすくなる
特に注目したいのは、作業効率との両立だ。フィルム梱包は作業者がフィルムを巻き付ける工程が必要で、熟練度によって仕上がりの品質にばらつきが出やすい。段ボール中心の設計であれば組み立て手順を統一しやすく、梱包ラインの自動化にもつなげやすい。物流の人手不足が深刻化する「2024年問題」のなかで、環境対応と生産性向上を同時にかなえる戦略として理にかなっている。
段ボールの波形構造(フルート)選定と防湿加工が鍵
技術面では、段ボールの波形の芯材(フルート)をどう組み合わせ、何層に重ねるかが鍵を握る。AフルートやBフルートなどを組み合わせることで、特定の振動を吸収しつつ、つぶれにくい強度も確保する必要がある。また輸送中の湿度変化で強度が落ちるのを防ぐため、湿気に強い加工を施した原紙を使うことも想定される。こうした素材の工夫は、日本の段ボール産業が持つ高い技術力があってこそ実現できるものだ。
荷主と物流会社が梱包設計を共同で見直す動きが加速
業界全体で見れば、精密機器メーカー各社が自社製品に合わせた梱包設計を見直すきっかけになる。とくに半導体製造装置や検査機器のように輸送回数が多い製品では、梱包コストと廃棄物処理コストを大きく減らせる効果が見込める。今後は、荷主企業と物流事業者が一緒になって梱包設計を最適化する「コ・デザイン(共同設計)」の動きが広がっていくだろう。
ビジネスへの影響
梱包材の調達先を集約し、コスト構造を単純化できる
精密機器を扱う製造業や商社にとって、このサービスは調達戦略を見直す好機となる。まず、梱包材の調達先を段ボール専業メーカーに集約すれば、まとめ買いによる単価交渉がしやすくなる。これまで複数種類のプラスチック資材を少量ずつ調達していた企業は、コストの仕組みをシンプルにできる。
古紙として売却でき、廃棄物処理費も減らせる
次に、廃棄物処理費の削減効果だ。産業廃棄物として処理費用がかかるプラスチック梱包材と違い、段ボールは古紙として有価で売却できる。年間数百台規模で精密機器を出荷する企業では、廃棄物処理費を数百万円単位で減らせる試算も成り立つ。
Scope3排出量の削減実績として示しやすい
三つ目は、環境・社会・企業統治(ESG)評価への貢献だ。サプライチェーン全体の排出量である「Scope3」の削減において、物流の梱包材は見落とされがちだが、数値化しやすく効果もすぐに表れる領域である。投資家や取引先に対して、環境配慮の実績を具体的な削減量として示せる点は大きい。
輸送品質基準のクリア確認と戦略的な連携がカギ
実務では、落下試験や振動試験といった既存の輸送品質基準をクリアできるか、事前の検証が欠かせない。日本通運と連携し、自社製品に特化した梱包設計を最適化することで、単なる外注サービスの利用にとどまらず、戦略的なパートナーシップへと関係を深める好機と捉えるべきだろう。
